今日もまた

私は夕方になると、思い出したかのように身支度をはじめ、もう何年も住んでいる、住み慣れた町の、見慣れた風景から徒歩五分、横断歩道を渡ってすぐのスーパーへ向かいます。自動ドアをくぐり、買い物かごを左手首にかけ、真っすぐ向かうはお弁当のコーナー。
お店は反時計回りになっていて、まずは野菜、そして飲み物、お肉、お魚、パン、お弁当と続きます。しかし私は、流れるプールに逆い泳ぐ子供のように、真っ先にレジ前のお弁当コーナーへ向かいます。
なぜか行きつけのスーパーはお弁当の数が以上に少なく、どの時間帯に行っても、在庫のストックがほとんどありません。

 

以前、お弁当がいたんでいておなかを壊したというクレームがあった、という噂を聞いたことがありましたが、それにしても少ない。

 

まさか、私が実はスーパーの店員一同に嫌われていて、来る時間帯の前に半額セールでもはじめて、一気に売ってしまっているのではないか、とか、私が行く直前の時間帯になると急に弁当を買い占めたくなる人がいるのではないか、とか、いろいろ想像したりしましたが、きっと違うのでしょう。


さて、お弁当のコーナーで探すのは、特製ソースのチキンカツ弁当。このお弁当はお値段も低く、カツが七枚も乗って、さらにご飯もおおもり(と真上のpopに書いてはいるものの、最近量が減ったのは気のせいではないはず)と、隣のいくつかのお弁当と比べると、お得です。

 

このお弁当に上からマヨネーズをかけると、美味しいだけでは言葉が足りません。
今日は先を読み、お昼時に意を決して向かいましたが、ありました。

ひとつだけ。

 

私は、なくした財布を見つけた時みたいな歓喜と安堵の気持ちを胸に抱きながら、いそいそと自分の買い物かごに放り込みました。そしてそのまま、流れるプールを逆走し泳ぎ、食パンと牛乳と果物いくつかを追加で入れ、レジへ向かいました。


今日もまた、食材と自分の運に感謝し、いただきます。明日も巡り合えますように。